laica: 2014年11月アーカイブ

 みなさま、避妊・去勢手術をあなたの小さな家族に受けさせるとき、何を基準に病院を選んでいますか?先生の腕がよさそう?病院がきれい?病院がはやってそうだから・・・という方もいらっしゃるかもしれませんね。

当院にもよく避妊・去勢について、ご質問の電話があります。時には細かい手術の段取りについてのご質問もありますが、その多くは「手術費用を教えてください」というものです。費用の安いところを探していらっしゃるのかも知れません。たしかに同じ手術を受けるなら安いほうがいいですよね!ですがちょっとだけまってください。本当に「同じ手術」でしょうか?

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避妊・去勢手術自体には大してバリエーションがあるわけではありません。手術の手技、方法は「○○法」みたいなネーミングの違いはあっても大体似たものです。では、なにが費用の違いの原因になるのでしょうか?あくまでも私の個人的な考え、と前置きさせていただいた上でですが、それは「その他の費用」といえるかも知れません。

 

 

 

 

手術するとき、一般的には当然ながら手術器具を滅菌します。滅菌は主にオートクレーブなどの滅菌機ですべての器具に高温・高圧をかけて菌やウイルスを完全に殺します。執刀獣医や助手が着用するオペガウンなども当然滅菌します。(メスや縫合糸など加温・加圧滅菌で痛みやすいものは別の方法で滅菌済みで販売されていて、オペのときにはじめて開封します。一般的には使い捨てです。)

 

手術を行うには麻酔をしますが、一般的には沈静麻酔で落ち着かせた後に注射で鎮痛・麻酔導入。その後、手術中は吸入麻酔で寝た状態を維持します。

 

一般的には手術中動物に、心電図や血圧計・体温計などをつけて急な血圧変動がないか、麻酔がきっちり効いているか、呼吸数は十分か、などを絶えずモニターします。手術中には点滴もしますし、体温がさがれば保温も必要です。手術のあとは術後モニターといって術後に異変がないかを一定時間監視します。

 

さて・・・くどく、しつこく何度も書いてきた「一般的には」という言葉・・・。もしこれらをしなかったら、どうなると思いますか?答えは「手術はできる」です たとえば麻酔に関してはさまざまな沈静・鎮痛麻酔薬を組み合わせることでそれぞれの長所(作用)をいかし、短所(副作用)を抑えることができます。ですが単一の麻酔薬で手術できないのか?といえば答えは「まあできます。」です。ただ長所が十分でれば、短所もでてきます。血圧が下がったり、呼吸が不十分になったり、鎮痛が十分できなかったりします。ただ、手術はできるのです。

 

上記以外にも縫合糸やメスの刃などもいくつも種類があり、当然安いもの、高いものがあります。動物に負担なく、手術後何年も生活する中で支障が出ないように考えれば体内にわずかとはいえ残る縫合糸もあまりに安いものは使えませんし、使いたくありません。(縫合糸反応性肉腫については当院ホームページの「手術について」をご参照ください。)

 

避妊・去勢手術のことを「簡単な手術なんですよね?」とおっしゃる飼い主さんもいらっしゃいますが、手術に簡単はありません。いつも「想定外」がないように獣医師は手術以外の隅々にまで神経をとがらせています。(オペ室に入ると人相が変わる獣医もたくさんいますよ)ただ、費用を安くあげようと思えば飼い主さんに分からないところで「隅々」を「スミ・・・」くらいにしてしまうことはいくらでも可能なのです。

 

決して「高い=良い」ではありませんが、あまりに安い金額を聞くと正直怖いです

 

ちゃんと質のよい手術を受ける為に、獣医師に手術や麻酔、術中・術後のこともしっかり質問しましょう!ちゃんとした先生は必ずきちんと答えてくれます